あの日、何に笑い、何に傷ついたのか。

先週の月曜日、自分は何を考えて過ごしていたのだろう。
昨日のランチに何を食べたかは思い出せても、その時心に浮かんだ小さな喜びや違和感、ふと見上げた空の青さは、もうどこにも残っていません。
脳は、重要でないと判断した情報を次々と捨てていく性質を持っています。
仕事のタスクをこなし、誰かの言葉にうなずき、時計の針を追いかけるだけの日々。
ふと気づけば、一週間、一ヶ月という時間が、私を置いてけぼりにして過ぎ去っていく。自分の人生が「何となく忙しかった記憶」だけで塗りつぶされていくことに、今は少しだけ怖さを感じています。
過ぎ去る日々を意味のある時間にするため、私は手帳を手に取ることに決めました。
完璧な記録はいりません。必要なのは、自分と対話するための、たった「1行」です。
迷子になった今の自分と、未来の私を繋いでいく。その決意で1行日記始めます。
相棒は「PLOTTER」。書く意欲を支える設計。

デジタル全盛の今、あえてアナログの手帳を手に取るのには明確な理由があります。
ライダー・キャロル氏の『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』(ダイヤモンド社)によれば、手書きは思考を減速させ、情報の取捨選択を助ける効果があるそうです。
キーボードを叩く速さでは、遅すぎて心に浮かんだ微細な感情を捉えることができません。
手書きのスピードがちょうどいいらしい。
ただ手書きの重要さを理解しても、書く気にならなければ意味がありません。
そこで選んだツールがデザインフィルの革のシステム手帳「PLOTTER」のバイブルサイズです。
革本来の質感を重視したこの手帳は、無駄な装飾を省いたミニマルなデザインが秀逸な一品。
4種類ある革はプエブロを選びました。
「プエブロ」は、イタリアの名門タンナー「バダラッシー・カルロ社」が仕上げた、ダイナミックなエイジングが特徴の革です。また、熟練職人が専用の金属タワシで丁寧に擦ることで革の表面を少し起毛させています。使い込むほどに表面の起毛部分が寝ることで平滑性が増しつつ色が濃くなり、革の中にたっぷり含ませたオイルがゆっくりとしみ出てくることでしっとりとした光沢感のある佇まいに変化します。
五感を刺激する上質な道具は、脳に「今から自分と向き合う」というスイッチを入れる儀式として機能します。
ジェームズ・クリアー氏の著書『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』(パンローリング)では、習慣化の鍵は「摩擦を減らすこと」だと定義されているそうです。
PLOTTERのシステム手帳は革でありながらぱたりと180°フラットに開きます。加えて「薄さ」という機動力があり、「書くまでの心理的ハードル」を最小限にしてくれます。
リフィルは5mm方眼
リフィルにはアシュフォードの5mm方眼「セクションリーフ」をセットしました。
文字のサイズが揃いやすく、後から見返した際の視認性が高いことも愛用の決め手です。BINDEXの方眼もありましたが3.5mmと小さく私の文字には合いませんでした。
この方眼のマス目を利用して、運動など習慣を記録するためのチェックボックスを作成しています。
PLOTTERとアシュフォードのリフィル。
この相棒が、記録を義務から楽しみへと変えてくれると期待しています。
「1行」でいい。科学と書籍が教えてくれた効能。

日記を「たった1行」に絞るのには、意志の力に頼らず習慣を定着させるための合理的な理由があります。
古川武士氏の著書『書く瞑想』(ダイヤモンド社)では、書くことで心の中の感情を「放電」し、前向きな気持ちを「充電」する効果が語られています。
心の中にある感情、思考、問題などを、言葉、行動、記録(日記、絵など)を通して外の世界に表現し、自分から切り離して客観的に捉え直す心理プロセスを「外在化」と言うそうです。
グロービス経営大学院教員の、伊藤羊一氏は著書『1行書くだけ日記 やるべきこと、やりたいことが見つかる』(SBクリエイティブ、2021年)の中でたった1行であっても内省の時間を取る大切さを記している。
記録するのは
①毎日、やったこと。
②自分にとっての意味
③そうか!と気づいたこと
④やったみよう!
についての4項目。短いが気づきと行動に結び付けられる点で大きな意味があると思う。これを真似していきたい。
さらに、こなした運動を記録するように「小さな前進」を書き留めることは、自己肯定感の向上に直結するらしい。
ハーバード・ビジネス・スクールのテレサ・アマビール教授は、著書『マネジャーの最も大切な仕事』(ダイヤモンド社)の中で「進捗の法則」を提唱しています。人間を最も強く動機づけるのは、大きな成功ではなく「自分は前に進んでいる」という日々の小さな実感なのだそうです。
アシュフォードの方眼リフィルに刻む小さなチェックマーク✅は、自分が着実に歩んでいることを視覚的に証明してくれると願っています。
週次レビューを追加する
これまで1日のタスクと進捗を記録していましたが振り返りに十分な時間を取れていませんでした。
そこで週次レビューを導入することにしました。
デビッド・アレン氏の名著『ストレスフリーの仕事術』(大和書房)では、週に一度の振り返りが心の平穏と生産性を保つ鍵であると強調されています。越川慎司氏の著書「AI分析で分かったトップ5%社員の時間術」では、金曜日に15分時間をとって内省し1週間の予定を振り返ることが成果につながる重要なタスクを見つけることにつながると述べています。
日々の記録という「点」をレビューによって「線」へと繋げることで、自分自身の行動パターンや思考の癖を客観的に把握できるようになります。「来週はこうしてみよう」という前向きな仮説は、日常に小さな実験のような楽しさを与えてくれると信じています。
確かな理論に基づいた「1行」の積み重ねで、自分の明日を少しずつ、けれど確実に変えていきたいと思います。
試行錯誤のプロセスを愛でる。未完成なまま、歩き出す。

1行日記も週次レビューも今は試行錯誤の真っ最中ですが、それで良いのだと自分に言い聞かせています。
「1行書くだけでいい」という制約のゆるさは、何物にも代えがたい「余白」を届けてくれます。
方眼のマス目を利用した運動記録も、無理のない範囲で続けていくつもりです。
仮に記録できなくてもレビューすることで「記録できなかったという事実」がその後の行動改善の役に立ちます。
こうした「小さな勝利」とPDCAの積み重ねが、折れない自信を育んでくれると期待しています。
手帳の革が時間をかけて育つように、私の習慣もまた、ゆっくりと形を変えていくはずです。
正解を求めるのではなく、今の自分に合う「心地よさ」を探し続けるプロセスそのものを楽しみたいと考えています。
1ヶ月後の私へ。プロットは、もう始まっている。
1ヶ月後、このPLOTTERを読み返す私は、どのような景色を見ているでしょうか。
ジュリア・キャメロン氏の名著『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』(サンマーク出版)には、書くことを通じて内なる声に耳を傾ける大切さが記されています。
完璧な計画よりも、今日を慈しむ「1行」を。
日々を綴り、振り返り、また新しい一週間をプロットする。その静かな繰り返しの先に、今より少しだけ自分を好きになれることを願って。